大変なビタミンブームである。ビタミンの持つさまざまな効用が話題を呼び、気軽にビタミン剤を利用する人が増えている。健康を守るために欠かせないのはもちろんだが、成人病、老化、がんの予防にも有効といった研究報告が発表されるにつれて、健康維持と病気予防の両面から関心が高まっている。そこでビタミンにはどんな効用があるのか、どうすれば上手に摂取できるのかを考えてみたい。
過熱ぎみのビタミンブーム
今や注目の的ともいえるビタミンだが、それではビタミンは体内で具体的にどんな働きをしているのだろうか。
ビタミンは、糖質、たんぱく質、脂質という3大栄養素が血や肉、あるいはエネルギーをつくる化学反応(代謝)を助ける役目をしている。現在ビタミンとして認められているのは13種類。主なビタミンの働きと効用を簡単にまとめてみた。
◆ビタミンA 目の機能を正常に保ち、粘膜や皮膚を強くする。
◆ビタミンB群 糖質、脂質、たんぱく質の代謝を促進する。B6は糖尿病やアレルギーに、B12と葉酸は貧血に効果がある。
◆ビタミンC 毛細血管、歯、骨などの結合組織を強固にするのが主な働き。病気に対する抵抗力を高め、しみやそばかすを防ぐことはよく知られている。ストレスを軽くする“抗ストレス効果”も見逃せない。
◆ビタミンD カルシウムの吸収を助けて骨や歯を強くする。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防に有効。
◆ビタミンE 老化を促進する有害物質・過酸化脂質ができるのを防ぐ“抗酸化作用”が注目を浴びている。善玉コレステロールを増やし、動脈硬化を予防する。
ざっと挙げただけでもビタミンの働きは大変なもの。健康に不安を抱く人が多い昨今、ブームになるのもうなずける。そのきっかけをつくったのは、アメリカのノーベル賞学者、ライナス・ポーリング博士。1970年に「ビタミンCの大量摂取が風邪の予防に効果がある」という説を発表。その後「がんの予防・治療にも有効」と報告したことで、一気にブームが過熱した。
CだけでなくAやEにも制がん作用があるとの研究報告が増え、この3つを合わせて“ビタミンACE(エース)”と呼ぶようになった。しかし制がん作用については、そのメカニズムがはっきり解明されたわけではない。1994年の春にはβ−カロテン(体内でビタミンAになる)の制がん効果を否定するようなデータが発表されて、世界中に波紋を投げかけた。
帝京大学医学部の安田和人教授によると「フィンランドで3万人近いヘビースモーカーの男性を4つのグループに分け、それぞれに偽薬、ビタミンE、β−カロテン、β−カロテンとEを投与して、平均6年間追跡調査した結果、予想に反してβ−カロテンとEを投与したグループが最も肺がん発生率が高かった」という。これまでβ−カロテンは肺がんの予防に有効といわれていたが、その逆の結果が出たのである。ただし、その評価も分かれていて、未だ解明されていない。
ビタミンは素晴らしい可能性を秘めてはいるが、今はまだ研究途上。新しい情報をうのみにして、必要以上に摂取するのは危険でもある。