糖尿病1
  

日本人と糖尿病

 「この世をば わが世とぞ思ふ望月の 欠けたることの なしと思へば」
 御堂関白、藤原道長53歳の歌である。立川昭二先生が著された「日本人の病歴」(中公新書)では、道長とその一族が「糖尿病」に苦しんでいたと紹介されている。平安貴族が残した日記、随筆、物語などからかなり詳しく彼らの病気や医療を知ることができるそうである。いわゆる病跡学である。『栄華物語』や道長自身の日記からは、彼と彼の一族の口渇、多量飲水の症状がはっきりと読み取れるそうだ。また、『小右記』によると度重なる胸病発作や視力障害、腫れ物の記述もあるらしい。糖尿病の合併症である狭心症、白内障、癰(はれもの)であろう。平安貴族には「飲水病」が流行ったことから、もともと日本人は糖尿病になりやすい遺伝子を有しているという指摘もあるようだ。飽食の時代にあって最も日本人が気を付けなければならない病気の一つといえよう。


日本糖尿病協会の試み

 そうはいっても、糖尿病は初期には自覚症状がほとんどない病気である。また、治療を受けても、病気そのものが完治してしまうものでもない。長期間にわたる血糖管理に医療従事者も患者も取り組まなければならない。このことが十分理解されていないと、治療の中断につながりやすく、ひいては血糖管理の不良、重篤な合併症を引き起こすことになる。
 患者さん同士の交流は、孤独な血糖管理の支えとなり、治療継続の観点からも有益である。昭和36年に設立された日本糖尿病協会という患者さんを中心にした組織の会員数は現在7万人を超える。『さかえ』という機関誌を発行しているほか、糖尿病週間の主催、サマーキャンプの支援、食品交換表の発行、糖尿病手帳の編集発行等、糖尿病に関するさまざまな普及啓発活動を行っている。21世紀最初の年に創立40周年を迎える同協会の活動、すなわち糖尿病という同じ病気を持った人々が、ともに勉強し、励ましあい、病気を克服しようとするその活動に拍手を送りたい。

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