中高年になると、ひざの痛みに悩む人が増えてきます。原因はさまざまですが、自宅で適切な治療を行うことによって症状を軽減できますから、医師の診断を受けたうえで積極的に取り組んでください。
最も多いのは変形性膝関節症
ひざが痛む原因としては、変形性膝関節症、慢性関節リウマチ、大腿骨顆骨壊死などが挙げられます。最も多いのは変形性膝関節症です。ひざが痛むとどうしても生活が消極的になりがちで、寝たきりや痴ほうにつながる恐れがありますから、早期に対処して症状を改善し、病気の進行をくい止めることが大切です。
■変形性膝関節症
ひざの内部の軟骨がすり減ることによって起こります。関節は骨と骨が連結している部分で、それぞれの骨は薄いなめらかな軟骨におおわれています。ひざを動かしても骨同士がこすれ合わないのはこの軟骨があるからです。しかし、年をとるにつれてこの軟骨が徐々にすり減り、ひざを動かすと関節に摩擦が生じて痛みを感じるようになるのです。
50歳以上の女性や肥満の人に起こりやすく、ひざに重みがかかると痛み、じっとしていれば痛くないのが特徴です。
初期の段階では、朝起きたときにひざがこわばる感じがする程度で、痛みが出てもごく一時的なものです。
中期になると、階段の上り下りや立ったり座ったりといった動作をするときにひざが痛むようになります。ひざの内部で炎症が起きて、熱をもつ、腫れる、水(関節を包んでいる関節包から分泌される液)がたまるといった症状もみられるようになります。ゴキゴキ、ギシギシといった関節がきしむ音を感じることもあります。
末期になると痛みが増し、日常生活に支障が出ます。また、軟骨がすり減って脚がO脚(X脚の場合もある)に変形してきます。
■慢性関節リウマチ
関節の中で炎症が起きる病気です。免疫機能の異常が原因で治りにくい病気です。
ひざだけでなく全身の関節に腫れや熱が出て痛みます。手の指、手首、ひじなど、上肢の関節から痛み始めることが多く、変形性膝関節症と違ってじっとしていても痛みます。20〜40歳代で発症します。
■大腿骨顆骨壊死
大腿骨の一部で、関節のすぐ上にある大腿骨顆の細胞が弱り、骨の一部が壊死して崩れる病気です。50歳以上の女性に多くみられ、症状も変形性膝関節症とよく似ています。そのため症状で判別するのは難しく、X線写真や断層写真、MRIなどで診断します。
ひざの痛みはセルフコントロールできる
ここでは、変形性膝関節症の治療法について説明します。通常、医師の指示のもとに自宅での治療が中心になりますから、自分で治すという心構えをもって積極的に取り組むことが大切です。薬物療法、物理療法、運動療法の3つを組み合わせて行います。
基本的な部分は同じですが、慢性関節リウマチなど病気によっては治療法が少し変わってきますから、必ず医師の診断を受けてから行うようにしてください。
■薬物療法
痛みや腫れ、熱感があるときに用います。内服薬、外用薬、坐薬、注射薬があり、症状や痛みの程度によって使い分けます。痛みや腫れなどが強いときには内服薬を用い、症状がおさまってきたら外用薬に切り換えます。坐薬、注射薬(病院での治療)はより痛みが強いときに用います。ただし、薬は痛みを抑えるためのもので、痛みの原因を根本から取り除くわけではないので、あまり薬に頼りすぎるのはよくありません。
外用薬は、塗り薬(クリーム、軟膏、水溶液など)と貼り薬(湿布)に大別されます。貼り薬を用いると関節を動かしにくくなるので、活動する日中は塗り薬、就寝中は貼り薬と使い分けるとよいでしょう。外用薬は入浴後などひざを温めてから使用すると成分がよく浸透して効果的です。
■物理療法
◎温める療法
変形性膝関節症ではどんな場合でも、温めることによって痛みが緩和されます。お風呂で温めるのが最も効果的で、お風呂の中でストレッチングを行うとひざの拘縮(固くなること)を防ぐことができます。できれば朝・晩2回入浴することをおすすめします。
入浴できない場合は、温めたタオルをひざに当ててラップなどでおおったり、ホットパックで温める方法もあります。
◎冷やす療法(アイシング)
腫れや熱感がある場合に行います。氷のうやアイスパックなどを患部に当てて冷やします。朝・夕2回、1回につき30分くらい行います。痛みだけの場合は必要ありません。
冷やす療法と温める療法は並行して行うことができます。その場合は先に冷やす療法を行い、1時間以上あけてから温める療法を行うようにします。
■運動療法
痛みの原因を取り除く決め手は運動療法です。痛みがあるときには安静にしているほうがよいと思っている方がいるようですが、決してそうではありません。痛いからといってひざを動かさないでいると、ひざの周辺の筋肉、軟骨、靭帯、骨が弱くなり、かえって痛みが増す結果になります。適度の運動を行ってひざの組織を活性化し、病気の進行を食い止めることが必要なのです。
運動療法には、筋肉を強化する筋力訓練、ひざの周辺の筋肉と靭帯の拘縮を防ぐストレッチング、ひざに重みをかけて軟骨と骨を強くする荷重訓練(ウォーキング)があります。筋力訓練とストレッチングは痛み、腫れ、熱感などの症状がある場合でも行ってかまいません。ウォーキングは歩いても痛みを感じなくなってから行います。
日常生活での注意点
*布団の中でウォーミングアップを
朝、目が覚めたら布団の中でひざを立て、右、左とゆっくり胸のほうに引き寄せます。そうすると痛みが少なく楽にからだを動かせます。
*階段は手すりを使って一段ずつ
階段を上るときは、まず痛くないほうの脚から踏み出し、痛いほうの脚をそろえます。下りるときには逆に痛いほうの脚から踏み出し、痛くないほうの脚をそろえます。
*重い荷物は買い物カートで
重い荷物を持って歩くとひざに負担がかかります。杖代わりにもなる四輪タイプの買い物カートがあると便利です。
*痛くなければ正座をしても大丈夫
正座はひざによくないと思われがちですが、正座はひざの関節を柔軟にし、拘縮を防ぐ効果があります。ただし、痛む場合は無理をせずにイスを使用してください。
●参考図書/黒澤尚著「ひざの痛みはこれ で治る」講談社健康ライブラリー)
変形性膝関節症の運動療法
◆筋力訓練
(1)脚上げ体操
あおむけに寝て、片方のひざを直角以上に曲げる。もう片方の脚をひざを伸ばしたまま床から10cmのところまでゆっくり上げ、5秒間止めて下ろす。これを20回繰り返す。脚を替えて同様に行う。慣れてきたら足首におもりをつけて行うとよい。
(2)横上げ体操
横むきに寝て、下側の脚を直角に曲げる。上側の脚をひざを伸ばしたまま床から10cmのところまで上げ、5秒止めて下ろす。これを20回繰り返す。反対側の脚も同様に行う。
(3)ボール体操
ひざを軽く曲げ、太腿の間にボール(バレーボールなどがよい)をはさむ。左右の腿でボールを5秒間押す。ボールは床につけたまま行う。20回繰り返す。
◆ストレッチング
お風呂で十分温まってから行う。浴槽のふちにつかまって立ち、ゆっくりしゃがむ。最大にひざを曲げられる状態で10秒間保つ。ゆっくり立ち上がり、ひざが伸びきるようにひざをゆっくり10回押す。これを2回繰り返す。すべって転ばないように注意すること。
◆ウォーキング
歩いても痛みがなくなってから行う。平坦な道を選び、1週間に2回以上、1回につき20分以上歩く。1週間に1日は休むようにする。